大いなる憲法論議を巻き起こそう―社会文化を豊かに育むために
2013年6月30日 学会表明

大いなる憲法論議を巻き起こそう―社会文化を豊かに育むために

2013年6月30日
社会文化学会運営委員会

私たち社会文化学会は、設立趣意書にあるように、「新しい「社会文化空間」の多元的・創造的形成に寄与しうることを目的とした基礎的・学術的な研究討論の場 を確保」することを目指しています。そして、この間反ナショナリズム、女性差別、生存権や社会権など民主主義に関わる問題をテーマにして、社会文化研究を 深めてきました。こうした社会文化空間の形成や社会文化研究は、民主主義と個人の権利が担保されてこそ可能なものです。しかし、この間の憲法改正をめぐる 議論は民主主義と個人の権利の擁護と拡大にまったく相反するものと言わざるを得ません。

とりわけ憲法96条の改正に関する安倍首相の発言とそれに同調する議論は、96条改正を突破口として憲法改悪に弾みをつけようとするものであり、戦後の平和と民主主義を根底から支えてきた憲法とその精神を完全に覆すものとして、大いなる危惧を抱かざるを得ません。

昨年4月に作られた自由民主党の「日本国憲法改正草案」には、憲法9条の戦争放棄=平和主義の理念をまったく捨て去り、国防軍を創設し集団的自衛権を公認すること、11条から13条を改悪して、個人の自由と権利を、「公益及び公の秩序に反しない」という制限付きでのみ認めるとしていること、国防義務(草案前文)、日の丸君が代尊重義務(3条)、家族の扶助義務(24条)などの義務を国民に課して、国家への忠誠を強め、そもそも国家を制約するものである憲法を国民支配の道具に改変させようとしていることなど、いくつもの重大な変更が提起されています。また、日本維新の会はその綱領(2013年3月30日)で真っ先に、現行憲法を「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶」だと決めつけて、大幅な改正を目指すとしています。

私たち運営委員会は、こうした憲法改正をめぐる昨今の議論に警鐘を促すとともに、戦後の憲法がどのような意味において社会=福祉的なものや社会文化の形成に寄与してきたのか、そしてまた寄与するものなのかどうかを大いに議論することを、ここに呼びかけます。