人間の生と文化を抹殺する安全保障関連法案の廃案を求める
2015年6月28日 社会文化学会運営委員会

人間の生と文化を抹殺する安全保障関連法案の廃案を求める
―社会文化を豊かに育むために―

2015年6月28日
社会文化学会運営委員会

私たち社会文化学会は、これまで設立趣意書と学会の活動にもとづいて、憲法改正の動きに対しては「大いなる憲法論議を巻き起こそう―社会文化を豊かに育むために」(2013年6月30日)を運営委員会声明として発表し、また2013年12月7日には総会で「特別決議 学問・思想・文化の自由で創造的な発展を妨げる「特定秘密保護法案」の強行採決に抗議する」を採択してきました。
現在国会で審議されている安全保障関連法案(既存の10法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」と新規の「国際平和支援法案」)は、これまでの私たちの危惧と憂慮をさらに現実のものにしようとしています。
私たちは、少なくとも戦後70年間一貫して戦争をしない、戦争に加担しないことによって、人間の生に対する尊厳という原則を堅持し、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」を促進することに貢献してきました。またそのことによって他国民からの尊敬と信頼を勝ち取ってきました。
しかし、今審議されている安全保障関連法案は、これまで私たちが戦後曲がりなりにも堅持してきた価値と倫理を根本から否定しています。
第1に、安全保障関連法案は、多くの憲法学者が指摘しているように、これまでの政府の憲法9条解釈すらかなぐり捨てて、憲法9条の平和主義の原則を真っ向から否定しています。これは、法律によって憲法それ自体を改正してしまおうとする点で、立憲主義の原則を踏みにじるものです。
第2に、安全関連保障法案は、それにとどまらず、曖昧に想定された「存立危機事態」下で集団的自衛権を自由自在に行使できるようにしています。これは、「我が国と密接な関係にある国」の戦争に巻き込まれるだけではなく、戦争に積極的に加担し、他国民を殺す側に回ることを意味します。
そして第3に、安全保障関連法案の倫理的・文化的問題点は、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利」を守るためにと称して、戦争という最大の暴力の行使を公然と容認していることです。このことは、集団的自衛権の名のもとに、人間の生を生きるに値する生と生きるに値しない生とに恣意的に分断し、人間の生存権を完全に踏みにじることを意味します。
以上のように、安全保障関連法案は、戦後築いてきた平和、非暴力、すべての生の肯定といった文化と価値を破壊し、戦争という最大の暴力を「安全」という名の下で公然と容認し、それに積極的に加担するものです。この点で、戦争の反省の上に立って私たちが戦後築いてきた社会文化を積極的にかつ創造的に発展させるという見地から、社会文化学会運営委員会は、安全保障関連法案に反対するとともに、その廃案を求めます。

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