声明
決議機関
2001年11月24日 文化権の実現をめざす広範な論議を 社会文化学会第4回総会
2002年4月14日 鹿児島国際大学3教授に対する「懲戒退職処分」の撤回を要請する 社会文化学会運営委員会

声明文

11月22日の衆議院本会議において「文化芸術振興基本法」案が付帯決議とともに圧倒的多数で可決され、今会期中成立の可能性が極めて高くなった。文化基本法の制定は世界的な趨勢であり、日本においてもその必要性が各方面から指摘されてきた。今回の立法化はそのような動向に対応したものといえる。

 とはいえ、今回の法案の内容とその決定過程に関しては、以下のような問題点を指摘せざるを得ない。

(1)「文化芸術」という奇妙な用語の採用に示されるように、この法律がそもそも芸術振興法なのか、文化基本法なのか、その基本的性格が曖昧である。この法律は本来「芸術文化振興法」として構想されたものであり、その内容の大半は広い意味での「芸術」に関わるものである。にもかかわらずそれに文化基本法的性格をも与えようとしている。その結果、芸術文化振興法の域を超えているが、文化基本法としては不充分なものとなっている。

(2)例えば、文化基本法の核心というべき「文化権」に関しては、「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることにかんがみ」という記述こそあるが、文化権に関する独自の条項はつくられていない。人権としての文化権は、@自由権としての文化創造権、A社会権としての文化へのアクセス権・享受権、B集団的権利としての文化自決権や文化的アイデンティティ権などから構成される。それらを簡潔に提示した独自の文化権条項を法の基本理念として組み込むべきである。

(3)文化権に関する十分な検討を踏まえていないため、法律中で列挙された振興対象領域も不完全なものとなっている。

(4)公的振興における「国」の役割ばかりが具体的に記され、地方公共団体には国の施策を補完する位置しかあたえられていない。これはユネスコなどが提起する文化政策の分権化の原則にも反するし、政府自体が提唱する地方分権化にも逆行している。文化の主体は市民であり、したがってその公的振興において中心的役割を果たすのが、市民生活に身近な地方自治体、とりわけ市町村であるのは基本原則である。例えば文化振興に関連の深い社会教育法では、市町村が具体的施策を担い、都道府県さらに国がそれを補完するという構成になっている。それと対比して、今回の法律はきわめて中央集権的だと言わざるを得ない。

(5)文化政策の歴史を振り返って、最も懸念されるのは国家統制・国民動員に利用される危険性である。それに対する歯止めとしての国家の介入・統制・指導・命令の禁止条項は、「消極的思考」として退けられてしまった。

(6)文化の基本法という画期的な意義を持つ法律であるにも関わらず、大部分の市民が関知しないまま、法案化がはかられ、採択されようとしている。これは、すべての人間に文化創造・享受を保障しようという法律の趣旨に全く反するものである。

以上の理由に基づき私たちは、現在提案されている法の性急な採択に危惧の念を表するとともに、文化権の実現を保障する基本法のあり方に関して、この国に住むすべての人々による十分な論議を行うことを要求するものである。

2001年11月24日

 社会文化学会第4回総会

鹿児島国際大学3教授への懲戒退職処分への抗議

3月末に本学会会員である馬頭忠治さんを含む3名の教授が鹿児島国際大学から一方的に「懲戒退職」を通告されるという異常な事件が起こりました。

本学会では事態の重大性を鑑み、4月13日〜14日開催された運営委員会議で緊急議題としてこの問題を取り上げ、運営委員会名で以下のような抗議・要請文を理事長、学長に送付することを決定しました。

 なお、この事件に関しては「鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会」が結成され、支援・抗議活動を行っています。事件の詳細に関しては同連絡会のHP(http://www.jca.apc.org/~k-naka/)をご覧ください。

(要請文)

鹿児島国際大学3教授に対する「懲戒退職処分」の撤回を要請する

学校法人津曲学園理事長 津曲貞春殿

鹿児島国際大学長    菱山 泉殿

                           2002年4月14日

                           社会文化学会運営委員会

                           (代表 谷 和明)

 去る3月29日、学校法人津曲学園理事長・津曲貞春氏及び鹿児島国際大学長・菱山泉氏の連名で、鹿児島国際大学理事会が当社会文化学会の会員を含む経済学部の3名の教授に対する「懲戒退職処分」を決定したことが告知された。

 この「処分」には、理事側の記者会見において「就業規則に抵触するというわけではない」と発言されてもいるように、その法的根拠がまったく示されていない。このような措置は、経営権限の乱暴な行使であり、一般の企業でも許されない行いである。またその理由には教官採用人事をめぐる経緯が挙げられているが、大学の教育と研究に責任を持つ教授会ですでに正式な手続き経て決定された事柄に関して、その過程と決定に直接関わったことを主な理由に教員個人に対して「懲戒退職処分」をするなどということは、大学と学問の発展を根元から掘り崩しかねない、歴史的に見ても類を見ないほどの行為である。

 何よりも学問研究の発展を求める一学会として、その基盤となる学問研究の自律性、学生の教育権や教員の教学権、それを確保するための教員の身分保障を根本において否定する今回の措置は、学問と大学の将来に大きな禍根を残すものとは判断し、ここに強く抗議し、処分の撤回を要求する。